HOME > 書籍検索:ザッツ・ア・プレンティー > ザッツ・ア・プレンティー
ザッツ・ア・プレンティー
著者 | 松岡 弓子 |
---|---|
価格 | 1,980円(税込) |
発売日 | 2011年12月21日 |
判型 | 四六判 |
製本 | 上製 |
頁数 | 416頁 |
ISBN | 978-4-7505-1130-6 |
Cコード | C0095 |
オンライン書店で購入
内容紹介
父・立川談志との258日
『ザッツ・ア・プレンティ―』は、故立川談志が好きだったディキシーランドジャズの名曲。
立川談志は、家族とこの曲に送られ、2011年11月23日、荼毘に付された。
3月の立川流一門会を最後に、声を失い、闘病生活に入った談志が、どんな思いで亡くなるまでのおよそ8ヵ月を生きたのか。最後まで「談志」でありつづけた天才落語家の姿、そしてそれを支えた家族。
本書は、日記スタイルで258日間、1日も欠かすことなく、談志と家族が病と闘う姿を記録した作品である。
内容を一部抜粋
●四月二十八日(木) 一時半頃、やっと父が起きた。ベッドから座椅子に移動して、『刑事コロンボ』を観だした。座ったまま、自分で血糖値とインシュリンをしてくれた。父のお世話をしたくてここに来ているが、本当はもっと話したり、遊んだりしたいのです。
●五月八日(日) 父が昔買ったビン・ラディンのTシャツを着て見せたら〈OK〉とうなずいた。ビン・ラディンのTシャツを着て介護する。ファンキーだ。
●五月十二日(木) 夕方になり、父と六階の部屋へ歩いていった。父は割としっかり歩けた。そして今、二人で向かい合って日記を書いている。とても良い時間だと思う。
●五月十三日(金) 何か話そうとするので、喉の穴をふさいだら何と声が出た!「昨日はだれが泊まったの?」はっきり聞こえた。パパはすごい。「立川談志は不滅です」と母と弟と喜んだ。
●五月十八日(水) 父が一時間もたたないで起きてしまったらしい。あまり調子がよくない。熱も出る。少しでも楽に過ごさせてあげたいのだが……。
●五月二十日(金) 普通のルールに収まるはずがない。父は立川談志なんだもの。毎日命がけで、落語のネタみたいなことをしている。
●五月二十四日(火) 父の悲しいメモを見つけてしまった。「動けない。物は喰えない。だァれにも会えず、独りで、家族に支えられて生きています」。
●五月二十八日(土) 今日、父の日記を盗み見た。「弓子の日記、オレよりきれいで、きちんとしてる」と書いてあった。初めて私の日記を読んだのだ。
●六月三日(金) トイレに連れていくのが大変になってきた。とにかく重いのだ。父が自分で思うように動けず、便座にちゃんと座るのが難しい。
●六月五日(日) 今日、エレベーターの鏡に父は自分を映して、顔をなでながら〈やせちまったなァー〉という顔をした。
●六月六日(月) 父が主治医に〈声は?〉と聞いたが、「すみません、今の状態では難しいです」と言われた。
●六月十四日(火) ゴミ捨てに行ってほめられたり、感激されたりするのもどうかと思うが、今の父にとってそれはすごいことなのだ。
●六月十八日(土) 父は今、日記を書いている。そばで母とペチャクチャ話をしていたら、〈しゃべりたァーい〉とメモに書いた。
【担当編集から一言】
本書は闘病記や介護日記ではありません。最後は立川談志ではなく、松岡克由(本名)に戻って、家族に看取られたという解釈もあるようですが、実はそうではないと思います。
この本は、立川談志が最後まで落語家であり続け、あくまで「談志」であったという証です。(M)