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秋田 環日本海文明への扉

秋田
著者 【著】伊藤俊治
【写真】石川直樹
価格 3,960円(税込)
発売日 2024年10月18日
判型 A5判
製本 並製
頁数 320頁+カラー64頁
ISBN 978-4-7505-1856-5
Cコード C0010

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内容紹介

【推薦】中沢新一さん
「列島の北の果て、日本の奥の奥へとつながっている秋田は、一つの独自の宇宙をつくりなしてきた。そこを原郷とする写真論の思想家は、愛情をこめて、土地の細かな襞々を克明にたどり、忘れられかけた歴史の記憶を呼び覚ましながら、広大にして深々とした、魂の秋田ジオラマを描き出した。」


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古来、蝦夷と大和朝廷の境界に位置した秋田は、松尾芭蕉が『奥の細道』で辿り着いた北の到達点にして、日本海特有の哀愁を漂わせる、歌枕の聖地であった。

北限の秋田。先は魑魅魍魎が跋扈する未開の地……
しかし、「文明」の行き止まりとされたその地こそ、日本海以北の海を挟んで、大陸や島々の人々が行き交う北方民族たちの文化ネットワークへの玄関口であった。

異国から来訪する「マレビト」が起動する文化変容。
厳寒の雪国で洗練されていく精神と美意識。
従来の枠を超えて美術/写真史を論じてきた美術史家が、故郷・秋田を歩きながら、その風土の深層へと分け入り、日本文化の底流にある異形の風景を鮮やかに現前させる。
日本のもうひとつのルーツを解き明かす「裏日本史」。

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【目次]
第①章 旅する光陰 ──その奥の奥の細道──
 ❶北限の岬
 ❷ 循環する聖水
 ❸松尾芭蕉と海に漂う島々
 ❹集積する詩学
 ❺旅に死すこと
 ❻旅人の秋田
 ❼蝦夷島の影 蝦夷島の影
 ❽アイヌとの交流
 ❾旅を揺り動かす
 ➓フィールドワークの先駆者

第②章 北海の彼方へ ──流刑地民族学の視点から──
 ❶日本海という孵化場
 ❷秋田の登場
 ❸渤海と粛慎
 ❹樺太への道
 ❺流刑地を延長する
 ❻流刑地民族学へ
 ❼鳥居龍蔵と源泉としての北方
 ❽北緯40度ノート
 ❾心は淋しき旅人

第③章 雪国の民俗 ──伝承の意味──
 ❶蘇る写真
 ❷ナマハゲと梵天
 ❸民俗学写真の精髄
 ❹風と土を彫る
 ❺秋田パノラマを開く
 ❻雪国の衝動
 ❼日本の奇跡
 ❽トンネルの向こう側

第④章 縄文の粒子 ──四次元の秋田──
 ❶岡本太郎の秋田
 ❷馬と牛、縄文と弥生
 ❸雪の結晶と遮光土器
 ❹ドキュマンを探して
 ❺マルセル・モースの弟子たち
 ❻縄文とアイヌ
 ❼人種の波動
 ❽蓑虫山人と縄文仮面
 ❾ストーンサークルの秘密
 ➓縄文のネットワーク
 ⓫四次元の秋田

第⑤章 宇宙から降るデザイン ──雪の家から秋田工芸まで──
 ❶白井晟一の温泉建築
 ❷郷土建築とモダニズム
 ❸風土をかたちに
 ❹白井晟一と縄文的なもの
 ❺今和次郎と雪との戦い
 ❻ペリアンのデザイン改革
 ❼秋田から沖縄へ
 ❽木地師たちの光跡
 ❾原型の夢
 ➓宇宙へ降り積もってゆく

第⑥章 秋田原郷 ──その風土と世界性──
 ❶故郷と幼年時代の思い出
 ❷日本海の文物交流
 ❸黒水靺鞨からナナイへ
 ❹ツングース系諸族のゆくえ
 ❺謎のオホーツク文化
 ❻菅江真澄とブルーノ・タウト
 ❼冬を美的に解決する
 ❽カントの風土
 ❾人間学と自然地理学
 ➓「世界=故郷」を愛するということ

第⑦章 秋田街道を超えて ──雪の果ての銀河──
 ❶宮沢賢治が歩いた秋田街道
 ❷銀河と月光
 ❸セールスマンの哀しみ
 ❹秋田蘭画への道
 ❺漂泊の絵画
 ❻角館の悲劇
 ❼雪の涯の風葬
 ❽組石からマタギへ
 ❾旅マタギと漂流民

第⑧章 白い神々の憑依 ──オシラサマとシャーマニズム──
 ❶「秋田風俗問状答」とネフスキー
 ❷巫女のオシラ遊び
 ❸イタコの口寄せ
 ❹馬産と養蚕
 ❺「遠野物語」から「捜神記」へ
 ❻アイヌ文化との関わり
 ❼オヒナサマを透視する
 ❽白山信仰の源流
 ❾ツングース民族大移動
 ➓稲と白山信仰
 ⓫渡り神としてのオシラ様
 ⓬シャーマニズムの本源

第⑨章 春くる鬼 ──異人たちの饗宴──
 ❶折口信夫と蝟集する霊
 ❷マレビトの変容
 ❸鬼神と鬼門
 ❹漂流する仮面
 ❺島から半島へ
 ❻兄弟の半島
 ❼日本海の龍神
 ❽ホカヒビトとマレビト
 ❾流浪する神

第⑩章 風の身体 ──土と光の記譜法──
 ❶天空の不夜城
 ❷蝦夷から武士へ
 ❸踊る秋田
 ❹闇から放たれた流星
 ❺風土と神話
 ❻亡者の舞踏
 ❼黄金の穂波
 ❽秋田の呪術師
 ❾身体風土の記譜法

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著者紹介

伊藤 俊治(いとう・としはる)
1953年秋田県土崎生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院人文科学研究科修士課程修了。東京藝術大学名誉教授。専門の美術史・写真史の枠を越え、アートとサイエンス、テクノロジーが交差する視点から多角的な評論活動を行う。『ジオラマ論』(リブロポート、ちくま学芸文庫)でサントリー学芸賞を受賞。展覧会企画に「日本の知覚」(グラーツ)、「移動する聖地」(ICC)、「記憶/記録の漂流者たち」(東京都写真美術館)など。著書に『写真都市』 (冬樹社)、『トランス・シティファイル』(INAX)、『生体廃虚論』(リブロポート)、『電子美術論』(NTT出版)、『バリ芸術をつくった男』(平凡社新書)、『増補 20世紀写真史』(ちくま学芸文庫)、『バウハウス百年百図譜』(牛若丸)ほか多数。

石川 直樹(いしかわ・なおき)
1977年東京世田谷生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学への関心を深め、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表する。2008年『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞、2011年『CORONA』(青土社)により土門拳賞、2020年『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)により日本写真協会賞作家賞を受賞。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)、『地上に星座をつくる』(新潮社)ほか多数。

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